恵迪寮中途退寮者の意見

北海道大学卒業者・恵迪寮中途退寮者の井上修一が書いています。恵迪寮での文化の押し付け、多発するハラスメント、民主主義を無視した運営に辟易して退寮しました。

飲酒事故防止対策が必要な恵迪寮生、必要でない恵迪寮生

恵迪寮では1995年に急性アルコール中毒で人が一人亡くなっている。その後、寮生は、寮内での飲酒に自主規制を加えるようになった。

自主規制の内容を挙げる。「飲酒事故防止対策特別委員会」という委員会が、自治会の機関として存在する。この委員会が議案を出して、規制を先導する。大きなコンパの前には安全対策についてかなりの時間をかけて話し合う。下級生に「洗面器サイズのカレーを食べ切れ」「沼に跳び込め」「ストームに参加しろ」と強要する上級生でも、酒の強要だけは絶対にしない。寮内での飲み会には原則申請と報告が求められる。

【恵迪寮自治会入会拒否という選択肢 2】(http://blog.hatena.ne.jp/hydrochloride/ex-keiteki.hatenadiary.jp/edit?entry=8454420450087497627) で、自治会に入会すると自治の正の遺産と負の遺産をともに相続することになると書いた。この飲酒事故防止対策は、負の遺産の最たるものだと思う。なぜなら、現行の飲酒事故防止対策は、「その場の盛り上がりのために勢いに任せて行動する恵迪寮生」を念頭に置いているからだ。「洗面器サイズのカレーを食べ切れ」「沼に跳び込め」「ストームに参加しろ」と強要する者に、酒の強要だけはさせないことが制度の目的になっている。言うまでもなく、伝統派以外の恵迪寮生はそういう存在ではない。このような過保護かつ過干渉な飲酒事故防止対策がなくても、自分で安全な飲み会を開催できるのである。飲み会の開催に申請と報告が必要な組織が世の中にどれだけあるかを考えればわかる。

21世紀の寮生であっても、自治会に入会することにより、「1995年に飲酒事故を起こした恵迪寮生たちと同質の存在である」という連続性を背負わされるのである。恵迪寮自治会のサイト (http://keiteki.org/osake.html) の

※飲酒事故防止対策特別委員会とは

1995年9月28日に行われた水産移行生追い出しコンパで起こった飲酒死亡事故から、飲酒死亡事故を防ぎたい、この事故を忘れてはならないという思いが生まれ設立された。その時の決意文の抜粋を下に記します。

事故以降、私達はこのような事故を二度と起こすまいと強く決意しました。 こうした決意の下、事故を引き起こした根本的な原因を追究してきました。その結果、酒に関する知識が文字通り致命的に不足していたことを第一の問題点として認識するに至りました。そして、実行的かつ具体的な事故防止策を講じるために事故防止対策特別委員会を設立しました。また、私達の無自覚な状態を許してきた従来の寮の文化を反省し、自治や生活自体のとらえ返しを行っている最中です。

事故の記憶の風化を招くようなおざなりな反省だけで今回の事故を総括しようとは考えてません。今後どういう寮自治を創っていくべきか、さらにどういう自分であるべきかを、二者を絡めながら模索していき、新たな寮文化を創造して初めて総括になると考えます。今ここで、二度と事故を起こさないという決意に加えて、本書を土台にして新たな寮文化を創造していくことを全寮生で決意します。

というのを読めば、この、連続性を背負わせるという姿勢が、おぼろげながら見えてくるだろう。これを断って大学当局が設置した居室と共用設備のなかで自分たちの生活をゼロから築くという選択、1995年の恵迪寮生は他人だからその責任は負わないという選択も認められるべきである。

2018年12月12日追記

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